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ルースパーツ遊びの知育効果が知りたい
子どもの「がらくた」遊びに理論的裏付けがあるのか知りたい

こんにちは、おったです。子どもの遊びの環境を本気で考え続けていたら、ルースパーツという考え方に出会いました。 [related:looseparts]

ルースパーツは「さまざまな方法で使ったり扱ったりできるオープンエンドな物質」のことです。

結論から言うと、ルースパーツ遊びは**非認知能力、認知能力、知覚・運動スキル、言語・コミュニケーション能力**を育みます。ルースパーツ遊びは、遊び方に正解がないオープンエンドな遊びかた。近年は、オープンエンドトイが非認知能力を育むおもちゃとして注目されています。しかし、ルースパーツの持つ知育効果は非認知能力に留まらず、子どもたちの総合的な学びを支えるおもちゃであるということができます。 ## 非認知能力（社会情動的スキル）を高める非認知能力は、簡単に言えば「自分を大切にし、自分を高めようとする力、周りの人とうまくやっていく力、自分の感情をうまくコントロールする力など、認知能力以外の心の力」のことです。 [related:non-cognitive-skills] ![非認知能力３つの枠組み](/post-imgs/non-cognitive-skills/non-cognitive-skills.webp "非認知能力は相関する3つの枠組みで説明できる") 『家庭、学校、職場で生かせる！自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ』によれば、自分と向き合う力、自分を高める力、他者とつながる力の3つの枠組みで説明できるそうなので、こちらをもとに深掘りしていきましょう。 ### 情動を抑制し、「自分と向き合う力」：自己認識・自己調整ルースパーツ遊びは、**五感を使った自分の身体や能力、感情を理解**を促します。また、物体の操作によって身体の機能を制御するとともに、強い感情をコントロールして集中力と注意力を維持する能力を高めてくれます。

おった

子どもがルースパーツに興味を惹かれ、のめり込んでいるときは集中力を育むチャンスです。十分な時間をとってその活動をサポートしてあげましょう。

## 目標の達成に向かって「自分を高める力」：自信・自尊心ルースパーツ遊びを通して、子どもは新しい技能を習得したり、成功体験を積み重ねたり、自分で設定した目的を達成したりすることができます。とくにルースパーツは整備されていない自然物などを使うことが特徴。バランスの取り方などを考えるうちに、子どもたちはたくさんの刺激を受け取っています。これらの経験は、子供の自信や自尊心を高めることにつながります。

自信・自尊心を高めるポイントは、子ども自身に「選択」の機会を与えること。遊び方を大人が指定しないように気をつけましょう。

### 「他者とつながる力」：社交性の発達ルースパーツは基本的に同じものを複数個用意します。ですから、場を共有している子ども同士の争いを生みにくいおもちゃなのです。さらに、遊び方に正解も間違いもないため、競争よりは協力を促すことができます。

おった

「友達の遊び方は自分の遊び方とは違う」と認識する体験は、ものごとを多面的に捉える力をつけるチャンスにもなりますね。

ルースパーツ遊びは、周りの大人や他の子どもたちと健全な関係性を作り上げ、維持するのに役立つのだそうです。 ## 認知能力も育てる ![外遊びをする子どもたち](/post-imgs/materials/log-playing.webp) 認知能力は、簡単に言えば「読み書き計算など、「頭の良さ」や「IQ」で表現される心の力」のことです。ルースパーツ遊びでは、**予測・推理・質問・分析する能力**が身につくと考えられています。乳幼児は、ものの性質を探求したいという自然な欲求を持っており、ルースパーツにはその意欲を支える効果があるのです。何を学ぶかよりは、どのように学ぶかの方が大切。

a 発達心理学者のピアジェによれば、子どもは直接体験から自分の知識を構築します。

だから大人が教えてあげるのではなく、子ども自身が予測・推理し、質問し、分析することで目の前にあるものの性質を知ることが大切なのです。では、子どもは探求活動から何を学んでいるのでしょうか。先にご紹介した”Loose Parts 2“では、6つの項目が挙げられていました。

ルースパーツ遊びが育む認知能力

因果関係
分類
系列
経験や考えの表現
量の概念
空間認知

ひとつずつ見ていきましょう。 ### 因果関係ルースパーツを使った探索活動は、**無意識的な行動（偶然の気づき）**から始まり、検証を通じて**意識的な行動**に移っていきます。そのプロセスを通して、子どもたちは原因と結果の関係に気づく能力を身につけていくことができるのです。 ### 分類さまざまな素材を比較することで、子どもたちはどれとどれが「同じ」で、どれとどれが「違う」かに気づいていきます。そうすると、今度は色や形、サイズ、素材、機能などによってそれらのルースパーツをカテゴライズしていくことでしょう。これらのプロセスによって、ものを「分類する」力を身につけることができます。 ### 系列分類の先で、子どもたちは系列の考え方に出会います。子どもたちは同じ分類のなかにも長さや重さなどに違いがあることに気づき、並べたり、積み上げたりするのです。

おった

「友達の遊び方は自分の遊び方とは違う」と認識する体験は、ものごとを多面的に捉える力をつけるチャンスにもなりますね。

幼少期の子どもたちは、モンテッソーリ教育でいうところの「秩序の敏感期」の真っ只中。無造作に並んでいたものに自分自身の力で秩序を与える経験は、子どもの脳を育てるのにとても有効です。 ### 経験や考えの表現ルースパーツは、何にでも変化できるおもちゃです。子どもたちはルースパーツを想像によって何かに見立て、形にしていくプロセスで、自分の知っている世界や経験したこと、考えたことを表現していく言語能力をつけていきます。 ### 量の概念幼少期は、抽象的な概念である数字や単位を理解する前の段階にあたります。この時期に「大きさ・多さ・長さ・重さ」などの「量」を土台にして数の概念を楽しみながら学ぶことが、その後の算数・数学の理解を助けてくれます。

おった

童具館の和久洋三先生は、これを「未測量の世界」と表現し、数を覚える前にたくさん触れることが大切だとおっしゃっています。

ルースパーツは、物を並べたり積んだり、入れたり捨てたりする活動を通して、量の概念を発達させてくれるのです。 ### 空間認知空間認知とは、物体が互いにどのように関連しているのか、そのつながりを理解・解釈する能力を指します。ルースパーツ遊びは、**①物と物だけでなく、②自分と物、③自分と他人との関係**について理解を深めることを促します。 ## 知覚・運動スキルも高まる知覚・運動スキルというのは、**目の前のものを認識し、運動につなげる能力**のことです。このスキルには、粗大運動スキル（身体全体を使った運動）、微細運動スキル（手や指を使った運動）、手と目の協応（目からの情報をもとに手を使う総合的な能力）の3つが含まれます。 ### 粗大運動スキルからだ全体を使った運動としては、以下のような例が挙げられます。これらは**子どもの運動能力を育てるために取り入れたい36の基本の動き**にも合致しています（丸括弧内が基本動作）。

ルースパーツ遊びにおける粗大運動の例

重い木を持ち上げる（もつ・ささえる）
ボールを追いかける（とる・わたす・あるく・はしる）
丸太を飛び越える（わたる・とぶ）
木の板を渡って歩く（わたる・あるく）
物を運ぶ（もつ・はこぶ）
水やものを入れたり捨てたりする（もつ・ささえる・はこぶ）

### 微細運動スキルおよび手と目の協応手や指を使った細かな運動としては、以下のような例が挙げられるでしょう。これらは当然、手と目の協応も促します。

ルースパーツ遊びにおける粗大運動の例

結び目のあるロープを掴む
洗濯バサミを留める
水を注ぐ
持ち替える
泥で作品をつくる

## 言語・コミュニケーションスキルを伸ばす ![親子の会話](/post-imgs/materials/talking.webp) ルースパーツ遊びには言葉の発達や、言葉によるコミュニケーションを促す効果があります。例えば、ものの名前、色、形、大きさ、質感、重さなど、遊びの対象物やその特徴を表す言葉を学ぶ機会になるため、語彙力が向上します。また、幼児はものの性質を探求した結果発見したことや想像したものについて言葉で表現します。大人は幼児をよく観察し、さまざまな質問や説明的な言葉を使って彼らの言葉を広げる手伝いをしてあげましょう。そうすることで、幼児は自分の考えを伝える能力を育むことができるのです。 ## まとめ：ルースパーツは子どもの「総合力」を伸ばす！以上、ルースパーツの知育効果について解説してきました。ルースパーツは子どもの認知スキルも非認知スキルも、運動能力も言語能力ものばす……つまり、総合的に伸ばしてくれる遊びです。ぜひ、日常の遊びに取り入れてみてくださいね。最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

参考文献

Beloglovsky, Miriam, Lisa Daly, and Janet Gonzalez-Mena. Loose Parts 2: Inspiring Play with Infants and Toddlers. Illustrated edition. Redleaf Press, 2016.
中山芳一. 家庭、学校、職場で生かせる!自分と相手の非認知能力を伸ばすコツ. 東京書籍, 2020年.
スポーツ庁委託事業子供の運動習慣アップ支援事業. 36の基本動作. 令和元年度. https://www.mext.go.jp/sports/content/20200814-spt_kensport01-000009406_2.pdf (2025-12-05最終閲覧)